桃山時代の美術 講師 奥平 俊六 先生
「世界に誇る日本の絵画の面白さ 本物を見て、感じてほしい」
「日本の絵画はめちゃくちゃ面白い! アニメーションや漫画が世界中で流行っているのは、絵巻物の表現に見られる伝統技術がそのまま生きているからです。日本の絵画の本当の面白さを知ってほしい」と力強く話す大阪大学大学院教授の奥平俊六さん。日本美術史、中近世絵画史が専門で、来春から始まる新講座「桃山時代の美術」の講師を務める。
「明日どうなるか分からない戦国期の影響を残しながら、幕藩体制の強化による平和の訪れと抑圧を予感するのが桃山時代。価値観が大きく変転する可能性を抱く中で、新しいものが生み出されていきます」
例えば、伏見城や大坂城など巨大な城郭建築を建てる一方で、二畳の茶室待庵ができるように、相反する文化が豊臣秀吉をはじめ同じ時代の武将たちによって誕生する。城郭の対面所に飾る豪華な金碧障屏画が作られるかたわら、奥向きの部屋には水墨画で静かな世界観が表現される。その価値観の振れ幅の大きさが面白いという。
「織田信長や秀吉、徳川家康といった天下人は、狩野派を御用絵師に使いました。その理由は金碧障屏画から水墨画まですべて描け、圧倒的な動員力で何百面もの絵を一気に仕上げられたから。戦国武将と同じように、狩野派は宮廷の御用絵師だった土佐派と戦略的に血縁関係を作って勢力を拡大します。室町から明治時代まで約400年続きました。絵画の流派が血縁を基盤に、これほど長く続く例は世界にありません」
奥平さんが研究・教育を行う上で重視しているのは、実際の作品を見に行くこと。今やデジタル機器の進歩で、映像や印刷物でも美術品を鮮明に見られるが、本物を自分の目で見ることが重要だという。今回の講座でも現地学習の機会を設けている。
「実物を見なければ大きさが実感として分かりにくく、色や質感も違う印象になります。やはり本物に出会って、リアルに感じてほしい。その際、知識や固定観念に縛られず、素直な心で向き合うことが大事です。この講座を手掛かりに、実際に作品を見に展覧会やお寺に足を運んでもらいたいですね」
講師プロフィール
大阪大学大学院教授 奥平 俊六 (おくだいら・しゅんろく)
愛媛県生まれ。東京大学文学研究科(美術史学)大学院卒。専門は日本絵画史。とくに近世初期の風俗画、狩野派、琳派など。主な著書に『彦根屏風-無言劇の演出』(平凡社)『俵屋宗達』(新潮日本美術文庫)『すぐわかる人物・ことば別 桃山時代の美術』(監修・東京美術)『屏風をひらくとき-どこからでも読める日本絵画史入門-』(大阪大学出版会)など。
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