リストはバッハの音楽に深い敬意を抱いており、演奏会では「ゴルトベルク変奏曲」なども弾いていたそうです。実は当時はバッハは既に忘れられた作曲家だったようで、リストはバッハ復活に貢献したといえます。この作品は、最初「バッハの名による前奏曲とフーガ」というオルガン曲として書かれ(1856年)、後に1870年に現在の名前で改訂され、ピアノ版も作られました。題名にもあるように、「バッハ(BACH)」を音にしたものを主題にして、「変ロ・イ・ハ・ロ」(ドレミでいうならシ♭・ラ・ド・シ)の動機は偶然とはいえ半音の下行を二つ含んだ神秘的なバッハらしい雰囲気があり、リストはその性質を際立たせながら、きわめてピアニスティックな技巧を惜しげもなく披露する華麗な音楽に仕上がっています。

10/22(土)17:30 武田優美&野村祐子&伴真由子「そして愛の夢」で演奏。