リストの音楽の特徴を一言で要約することはとても難しい。ある作品は技巧の誇示を目的に書かれているかと思うと、ある作品は観念的哲学的想念に満ち、またある作品は深い宗教的、彼岸的祈りに基づいていたり、実に謎めいた作曲家です。とはいえ、リストといえば「超絶技巧の巨匠」というのが名刺代わりとなっています。そのきっかけは、常軌を逸したヴァイオリンの名人芸でヨーロッパ中を席捲したニコロ・パガニーニとの出会いでした。それは1832年。その時リストは「私はピアノのパガニーニになる。さもなければ狂人になるだろう」と言った。その決意表明ともいえる作品が「パガニーニ大練習曲」という全6曲からなる曲集です。第3番の「ラ・カンパネラ(鐘)」がよく知られており、これはパガニーニの「ヴァイオリン協奏曲第2番」の第3楽章に基づいて書かれました。それ以外の5曲は全て、ヴァイオリン・ソロのための「24のカプリース」からとられており、特に第6曲は、その「カプリース」の第24曲によるもので、これはリストのみならず数多くの作曲家がとりあげています。
23日(日)11:00 西村静香「ラ・カンパネラ パガニーニによる大練習曲 全曲」で演奏。