スイスの自然から受けた印象に基づき作曲された「巡礼の年第1年」に対し、「巡礼の年第2年イタリア」はイタリアの芸術作品、ラファエロの絵、ミケランジェロの彫刻、サルヴァトーレ・ローザの詩、ペトラルカのソネット、そしてダンテの『新曲』に触発されて生まれました。ペトラルカのソネットは、ペトラルカがラウラへの愛を歌いあげた俗語詩集『カンツォニエーレ』から採られており、以前に作った歌曲のピアノ版で、恋がもたらす喜びと苦しみに煩悩する男心を綴っています。その中でも「第104番のソネット」が特に有名です。「巡礼の年第2年」の最後を飾る「ダンテを読んで」は、これだけで15分前後かかる大曲です。リストが『神曲』から得た感興を表現したものですが、「ソナタ風幻想曲」という副題は、リストが敬愛するベートーヴェンの作品27の2曲のピアノ・ソナタにつけられた「幻想曲風ソナタ」をもじっており、偉大な「ピアノ・ソナタ」の足がかりとなった作品です。

23日(日)16:30 奈良田朋子「巡礼の年第2年−イタリアの文豪との出会い」で演奏